東大総長賞に思うこと

 久しぶりに宣伝以外のことを。
 僕も一応は東大職員の立場ですので、あまり書きすぎると問題になるのかもしれませんが。
 今年も第2回目の東大総長賞受賞者が発表されています。
 http://www.u-tokyo.ac.jp/stu01/h12_03_j.html
 自分の受賞式のときもそうでしたが、皆さんまぁ難しくて且つ最先端の分野でそれぞれ活躍されています。
 総長賞の授賞式では、各自が5~6分で、自分の受賞内容についてのプレゼンを、東大総長を始めとした有識者の方々の前で発表します。
 全然専門外の分野ばかりで、眠くなるプレゼンばかりだろうと思っていたのですが、これが全く違うのです。
 とにかく面白い。
 自分の授賞式のときは、「位相スクイーズド光の生成とアダプティブホモダイン測定の研究」の話をした、当時工学部4年の武田俊太郎くんとか、「超新星爆発の観測的・理論的研究」の話をした、当時博士課程3年の田中雅臣さんとか、タイトルを見ただけでかなりハードルが高そうな内容ですが、皆さん物凄くかみ砕いて、本当に誰でも興味が持てるような、活気と熱意に溢れた素晴らしいプレゼンでした。
 総長賞受賞者で集まったときに話をして下さった、平成19年度に「超弦理論とゲージ理論の双対性における可積分性の研究」で総長賞を受賞された岡村圭祐さんによる「10次元の世界の話」も、物理を全く知らない僕でも食いついてしまうほど面白い話でした。
 学術以外でも、将棋女流アマ名人戦2連覇の笠井友貴さんや、日本が世界に誇るレゴビルダーの三井淳平くんなど、実に豊富な人たちが名を連ねています。
 自分は単に好きな3DCGをやっていただけですが、他の方々は、世界に通用する超一流の実績を持った方々です。
 これからの日本、世界を動かす、日本が誇る人材が集結した東大総長賞の授賞式を、なぜ小柴ホールという高々170人程度しか入らない小さなホールで、しかも基本的には内輪だけで行うのか、僕には理解出来ません。
 総長賞受賞者たちは、話の下手な一部の教授たちよりも年齢もずっと若く、本当にエネルギーに満ちあふれ、しかも、誰にでもわかりやすく自分たちの研究・活動を伝えることが出来ます。
 安田講堂のような大ホールで行い、誰でも参加出来るようにし、きちんとプロの撮影舞台が入ってプレゼン風景を記録する。そして、英語字幕を付けてYouTubeなどで配信する。
 それだけで超一流の映像コンテンツが出来上がるはずです。
 僕が総長賞を頂いたとき、僕のことをずっと取材して下さっていたプロのディレクターの方が是非カメラを入れて撮影したいと東大に申し出て下さいましたが、許可されませんでした。
 後日僕に渡されたのは、ホールの定点カメラで撮った、実に意味のない、本当に全く無意味な映像でした。
 東大総長賞は(僕の認識では)東大公式の表彰であり、その授賞式も東大公認なわけですから、会場を安田講堂に変えることくらい簡単なはずですし、東大の広報費を使えば撮影舞台を用意することくらいそんなに難しいことではないはずです。プロのカメラマンが複数のカメラで撮影し編集すれば、本当に一流の映像になることは間違いありません。
 1人5, 6分のプレゼンですから、英語字幕を作るのもそれほど難しいことではありません。
 日本でも最近TED人気が高まりつつありますが、東大総長賞授賞式はすぐにでもTEDに並ぶポテンシャルを持っています。
 東大総長賞授賞式をもっともっとオープンにする。
 とても簡単なことだと思うのですが、何故出来ないのでしょうか。
 こんな小さなブログにこんなことを書いても大した力にならないとは思いますが、賛同して下さる方がいらっしゃれば幸いです。


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東大総長賞に思うこと への8件のフィードバック

  1. masa_36 のコメント:

    おもしろいですね。
    すぐにでもコンテンツにしてほしいです。
    http://www.ted.com/translate/languages/ja
    公開されるされないに関わらず、ご本人たちは
    >皆さん物凄くかみ砕いて、本当に誰でも興味が持てるような、
    というように、「専門外の方々」へのプレゼンを一生懸命考えているはずで、
    すぐにコンテンツになりうるのではと思います。
    もしかしたら権利関係なのかもしれませんが、
    http://itunes.apple.com/jp/artist/dong-jing-da-xue/id159237214
    いくつかの公開講義をpodcastで公開されているところを見ると、通すところ(東大広報?)を通せば、アーカイブとしてWeb公開(たとえばpodcastとして)は不可能ではないのではと思いました

  2. 清水 修 のコメント:

    先日お会いした東大本部広報室の清水ですー。瀬尾さんのお気持ち、すごくわかります! ぼくもそう思います。というか、イベントのみならず印刷物やHPなどに関しても日々、同様のことを考えています。でもねー、本部はめちゃめちゃお金がないんだよぉ。総長賞は学生部(現・教育学生支援部)のマターですが、持っている予算が少ないことに関しては広報と変わりありません。もし、総長賞をオープンにして大々的にやるならば、そのイベントだけで収益を上げて、独立採算的に回していくだけの算段をしなければならんのですー。だから、東大本体が総長賞をヒットイベントにする自信を持つに至らない限り、現在の状態が続くと思います。まあ、でも、学内の各部署で単独民営化に近いスタイルをとらねばならん時代がやってきたとも言えます。逆に、それが「東大が変わるチャンス」なのかもしれません。

  3. kmtr のコメント:

    以前TEDの字幕日本語翻訳チームの一員として活動していた者です。
    東大のそのイベントに参加していないので内容はわかりませんが、TEDで私が感じるのは、日本の科学者や芸術家の登場回数が非常に少ないということです。また、翻訳チームの人間のクオリティもまだまだ自分も含めたりません。
    あたかも世界最先端の研究が、アメリカでしか行われていないような感覚に陥ります。TEDxTokyoというイベントも東京で毎年開かれ日本の最先端研究者たちも登場しYoutubeでも放送されていますが、なかなか社会一般には広まりません。
    TEDのようなもう広まった大きな舞台に日本の研究者が出ていくべきなのか、それとも東大がほそぼそと直接世界に発信するべきか、そこはなかなか難しい所だと思います。
    海外の学術系放送(iTunesUなど含)は、高い映像クオリティと、その映像だけで学べるレベルの高い実用性までを兼ね備えていますが、確かにブログ筆者様の指摘の通り日本では「映像で流した」というその単なる事実だけを追い求めてしまう傾向にあると思います。東京大学のiTunesUを見ていてもその傾向は顕著で、映像をよりわかりやすく見せるという努力が足りません。
    大学教授たちの研究論文と同様、言語の壁があり海外への発信力という面で弱いというのは大きな障壁ではありますが、私がおこなっていたようなTED翻訳チームのようなボランティアを学生から生み出していくという動きも良いのではないのでしょうか。
    かつて東京大学は学生と戦い、学生の力が大学を変えたことがあったはずです。学生たちが動かないという意見ではなく、どうしたら人が動き出すか、そこが要なのかなと考えています。
    勝手な意見ですが、東大を変えていく、日本を変えていくのは個人なのですから。

  4. ユニ君 のコメント:

    はじめまして。ユニ君と申します。この記事のリンクがfacebookやTwitterでとりあげられていたので、そこから来ました!
    同じ東大生として激しく賛同です!!とにかくなんやかんやで内輪が大好きな人が多すぎる!まあ東大だけじゃないかもしれませんが…。本当にもったいないですよね!私もその式YouTubeとかで見たかったです(今ドイツなので…w)!
    kmtrさんのコメントにあるようなTED翻訳チーム的ボランティアがあれば、参加したいです!!

  5. 太原正裕 のコメント:

    確かに聞きたい内容ですね。
    私のように、理科系の夢破れ
    社会科学の分野の研究者になった
    者には、特に興味深いです
    城西大学経営学部所属
    渡部潤一先生の友達より(笑)

  6. someone you know のコメント:

    僭越ながら対策を考えてみました。
    1.(発表に内部リソース利用)東大の決裁権者に何らかの即時的メリットを作り上げ説明して予算を取る
    2.(発表に外部リソース利用)TED等外部の一般向けイベントや非学術イベントでも、それを学内で評価として+に反映する実のある仕組みを作る
    1.についてはプレゼン力とその後のイベント運営力が求められ、2.については学術保守派に対する説明と評価基準で紛糾しそうですね。
    ↑は組織のインセンティブ設計ですが、それはきちんと発表者のインセンティブ設計と連続性を持たせないといけないでしょうね。つまり一般向けの説明という行為を、学者としての人生の中でどれくらい優先順位をあげられるか、という。

  7. kmtr のコメント:

    ユニ君さん
    http://www.ted.com/pages/293
    から参加できます。基本的には他の翻訳者1名と共同で翻訳字幕を完成させます。
    学生の方が時間的余裕があるのでやりやすい、もしくは専門的分野に近いものならば翻訳しやすいというメリットがあります。
    TEDxTokyoなどの日本開催の発表会型のものは、ボランティアの翻訳者が以下の動画のように翻訳を行なっています。TED本体のサイトにTEDxの作品がアップロードされることはありません。
    http://www.youtube.com/watch?v=Pu44DvxaXOg
    話は変わりますが、
    TEDに登場することにメリットを感じさせることに、TEDに参加することで(もしくはン本ローカルのTEDxでもよい)、学術界での知名度を上げられるというのがあるとは思います。出演にともなって、ほかからの引き合いが上がり資金的なメリットもあるのではないのかなとは思いますが、どうでしょうか。
    研究者たちの資金源や、それと知名度との関係、研究機関・大学からの評価のされかた等を一度明確にする必要がありますね。

  8. 文化人 のコメント:

    確かに賛同できます。
    いかに素晴らしい研究実績を挙げても、馬耳東風・他山の石になってしまうのが、日本と言う國ですねえ。

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