サイエンスCGにかける想い

 東大医学部同窓会の機関紙である「鉄門だより」の2012年7・8月号に、「サイエンスを、正しく、楽しく。」と言うタイトルで寄稿しました。
 サイエンスCGにかける想いを短い文章でまとめたつもりです。本日公開になったのですが、頑張って書いた記事なので、本ブログでもご紹介しようと思います。
 お時間ございますときにお読み頂ければと思います(画像はクリックで拡大します)。
 
サイエンスを、正しく、楽しく。
瀬尾拡史(平23卒)
東京大学医学部附属病院 初期研修医
NEJMやScienceなどの超一流雑誌において、非常に凝った美しいイラストや図などをご覧になったことがあるかと思う。
これらはMedical Illustratorと呼ばれる医療・医学を専門としたアーティストの手によるもので、雑誌社が常勤で雇っている他、フリーのIllustratorやプロダクションに外注することも多い。
実は、アメリカ、カナダには解剖図譜で有名なNetterやGrantなども関わったMedical Illustration専門の大学院が古くからある。
大学院生は医学生と同じ授業や試験に臨み、かつ手術室でのスケッチ実習や補綴モデルの制作などの実践的な演習を数多くこなしている。
東大ではM3の1から3月の3ヶ月間、Clinical Clerkshipで毎年10名以上の学生が海外の病院や研究所で実習を行なっている。
本学医学部が公式に提携している機関以外にも、学生が独自に先方の病院や研究所と交渉して先方からの許可を得られれば、本学での最終審査の後に実習可能となる。
私はこの期間でMedical Illustration教育の最高峰であるJohns Hopkins MedicineのDepartment of Art as Applied to Medicineへ2ヶ月間の短期留学をさせていただいた。
Johns Hopkins Hospitalとは学術交流協定が締結されており毎年優秀な東大生が実習しているが、私はHospitalではない上記学科でどうしても実習したいという想いから、先方の学部長と直接交渉し、東大としても日本人としても先方の学科としても初めてとなる短期留学生となった。
アメリカNo.1の病院と評されるJohns Hopkins Hospitalの先生がたが若きアーティストたちに全面的に協力している姿を目の当たりにし、なぜ学術的な正確性を保ちつつ、同時に美しく魅力的な「正しく、楽しい」絵が海外には多数存在するのか、その理由がはっきりと理解できた。
と同時に、日本では該当する学科がどこにもなく、イラストや広報にかける予算や理解が非常に乏しいという現状に改めて落胆した。
駒場学生時代から3DCGの専門スクールとダブルスクールをし、東大法医学教室や薬理学教室にて医療・医学に関連した3DCG制作を続けていたのだが、M3の3月に帰国してまもなく、「全国初となる裁判員裁判第1号事件で使用された、被害者の傷の状況を表す14枚の3DCG証拠画像の制作」という題目で東大総長賞、および東大医学部初となる東大総長大賞を頂いた。
論文掲載数0である私が学術分野で総長大賞受賞となった意義は大きいと思っている。
私は現在、東大病院にて初期研修医2年目を迎えた。
総長賞受賞やメディアでの紹介などもあり、各診療科をまわるごとに「CGの人」と呼ばれ、それぞれの科で3DCGを研究や診療に生かすアイディアやヒントを多くの先生がたが語ってくださり、この分野の未来を日々実感している。
初期研修を終えた後は、3DCGを医学、そしてサイエンスの世界に広く役立てることに人生を注ぐつもりでいる。
最近では、サイエンスCGを専門とするSCIEMENT(サイアメント)というブランドも立ち上げた。
初期臨床研修との兼ね合いもあり、現在はあくまでもアドバイザー的な立場だが、多くの支援者の方がたに恵まれ日々活動している。
どこかの研究室に属するよりも、自分で血眼になって切り盛りしていく方が自分には向いていると感じている。


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サイエンスCGにかける想い への1件のフィードバック

  1. しょう のコメント:

    はじめまして.
    いつもブログを拝見しています.
    大学1年生の者です(医学科)
    受験期に瀬尾さんのブログの"医学部"を何度も読み返していました.
    そこで、質問なんですが、僕はまだ1年生なので専門科目等はあまりありませんが興味本位で図書館で"解剖学講義"と"ネッター解剖学アトラス"を借りてきました.瀬尾さんご自身も解剖学は並大抵ではなかったと綴っていらっしゃいますが、どのようにして理論づけて暗記をしたのでしょうか?是非とも参考にさせていただきたいと思います.宜しければアドバイスをしていただけると幸いです.

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