一年を終えて。

ちょうど一年前は、3/30の夜にCCU当直で、「この先生が当直のときには急患は来ない!」と言われていた先生とペアだったのですが、真夜中に緊急カテが入り、ほとんど全く寝ずに3/31になり、そのまま引き継ぎ云々が終わらずに夕方になってようやく帰宅して、そのあとすぐに小さなオフィスに1人で行って、その小さな部屋に1人たたずんで、「あー、明日から自分は病院に行かずにここに来るのかぁ。。。」と、何が待ち受けているのか全く分からない状況の中、サイアメントの社長としての人生が始まりました。

医学部を卒業して、CGも学んで、東大病院で初期研修も終えて、長年やりたかった「サイエンスCG」を本格的に取りかかることが出来、昨年の4月からがようやく自分の人生のスタートだったわけですが、どうやって仕事取ってくるのかとか、これから自分の生活はどうなるのだろうかとか、スタート地点に立ったは良いものの、ゴールどころか1m先も見えないような状況でした。

前半は打ち合わせや挨拶回りで体力的には忙しかったのですが、忙しいだけで具体的な仕事にはほとんどならず、このまま数ヶ月で会社が潰れるんじゃないかと本気で心配していました。

僕のまわりでベンチャーを立ち上げている人たちは、コンサル出身だったり、MBAを取っていたり、ベンチャーのインターンを何度も経験していたり、そんな人たちばかりの中、僕は経営のことなんて何もわからず、ただ「世界に誇れる質の高いサイエンスCGを作って、「サイエンスを、正しく、楽しく。」するんだ!」と、それしかありませんでした。

そこから少しずつ、とても大きなチャンスをいくつも頂き、とりあえず何とか会社は潰れずに最初の1年を乗り切ることが出来ました。

複数の案件を経験してみて感じたことは「今までサイエンスCGは一体どうやって作られてきたのだろう???」と言う素朴な疑問です。

最近では、自分が本制作をすると言うよりは、プロデューサー、ディレクター、監督、のような立場ではあるのですが、どの案件も思った以上に自分がやらなければいけない仕事が多いです。デザイナーさんが内容を理解出来るように解説を書いたり、ストーリーの大枠を作ったり、ナレーション原稿を考えたり、映像演出を考えたり。どれも内容(=複雑なサイエンス)と映像制作とのどちらもわかっていないと出来ないことばかりで、ガイドラインを読んだり論文を読んだり、時には尺や映像表現の限界を理由に、監修の先生に意見したりもするのですが、サイエンスの経験が全くない人たちだけで作るのは不可能に近いのではないかと改めて感じました。

「科学ジャーナリストやサイエンスコミュニケーターは、修士や博士くらい持っててよ。」と言う意見を時折耳にしますが、クリエーターも全く同じな気がします。クリエーター全員がそうである必要は全くありませんが、家造りで言うところの建築士にあたる人がサイエンスCGの世界にあまりにも不足している…と言いますか、日本ではほとんどいないように思います。

「医者辞めて何やってんの?」とか今でもよく質問されますけれども、絶対に必要な役割だと思いますよ。

2年目は一体何が待っているのでしょうか。とてもインターンのようなことが出来るような規模ではまだ全くありませんが、可能であれば、同じような夢を持っている人たちを見つけて仲間にして、「チーム」を作っていきたいですね。

CGデザイナーでもプログラマーでもディレクターでも、サイエンス好きな人を集められれば、まだまだ色んなことが出来ると思うのです。

まずはこの1年間を支えて下さった皆さま、本当にありがとうございました。
何が起こるかわからない2年目ですが、今後ともよろしくお願い致します。


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