3Dでやる意味

SNS内でこっそり書いた文章が、一流のクリエーターの方々から予想以上に賛同して頂けて驚いたので、こちらにも転載+ちょっと追記しておきます。

デジハリスクールのCGクラスの合同作品発表会を途中から見させて頂きました。僕も8年前(…そんなに昔か…)は発表する学生の側でした。前半の途中からの参加だったので、始めの方がどうだったのかはわからないのですが、宮崎弘喜先生のゼミだけ、ここだけ全然違う学校か??と思ってしまうほどレベル高かったです。宮崎先生には3年前に短期集中のZbrushのハンズオンセミナーで1日だけ教えて頂いたことがあり、たった1日なのですが、セミナー後に宮崎先生のほうからメールを下さいまして、とても嬉しかったことを今もよく覚えています。

昨日の発表会は、宮崎先生のゼミの他は…一部を除いて、GnomonとかGobelinsとかの学生作品と比較すると明らか過ぎる、と言いますか、何やっても追いつけないだろうくらいのレベルの違いを感じてしまうのです。え、フレームレート合ってますか?みたいなのもあった気が。。。

何と言いますか、自分が在籍していた頃から疑問だったのですが、ストーリー重視とか、学内に「ベストストーリー賞」が設けられているとか、理解出来ないのです。CGを学びに来ているのであって、ストーリー作りを学びにきたわけでは無いはずなのに。

発表会でも「ストーリー重視」と強調されていた、特に人間ドラマ的な作品は大体「…」な感じで、そもそも「そのストーリー、CGで表現する必要あるんですか?」とか、「で、CGでどこ頑張ったんですか?」と言うものだった気がします。

ストーリー重視なんて、よほど脚本の才能があって、且つCGでないと表現が難しい、とか、CGだからこそ伝えられること、とか、CGだから面白いようなことでないとまず間違いなく失敗します。

中途半端に本物に近づけた人間が出てくるストーリーとか、それだけで考え物です。しかもストーリー自体も良く判らなかったり、それでいて黒画面が長すぎたり、そこ絶対そんなに尺要らないよね、みたいなものがあったり。どうしてもストーリー重視で人間ドラマを扱いたいのであれば、実写で取るとか、デフォルメしたCGやアニメにすれば良いのに。この質感すげー、とか、この動きやばい!とか、そう言う何かしらの強みも無いのに人間ものに挑戦するとか、もう一度考え直した方が良いと思います。

そんな中で宮崎先生のクラスは、モデリングリールだったりポージングだったりモーショングラフィックスだったり、これぞCG!と言うものが多くて、クオリティも高くて感動的でした。これらにストーリーが無い、と言うわけでは無くて、寧ろ逆です。どんな順番で見せると格好良く見えるか、どのカメラアングルだと躍動感があるか、どれくらい被写界深度を入れるとよりモデルが際立つかとか、必ずしも起承転結ではないにしても、もの凄く考え抜かれているのです。CGとしてのメリット、CGでしか表現出来ないことを活かしたストーリーとでも言えば良いのでしょうか。

そもそも世の中に、脚本からCGまで全部やります、みたいな人なんてほとんどいないし、それで生活していくなんて超売れっ子でもない限りまず無理だと思うのです。にもかかわらずストーリー重視で行きましょう、と言うのは、就職先・働き口もないのに魅力的であるかのように取り繕って、就職難民を増やすだけだと思うのです。
クライアントからの「何となくこんなイメージでCGにしたいのですが」という要望に対して、それだったらこう言う世界観で、カメラの動きはこんな感じで、ライティングはこうやって…と「ストーリー」を作っていく。大切なのはこっちで、それを実現するための表現手法を学ぶのがCGを学ぶ、と言うことではないかと。

CGと言うのは、数ある表現手法のうちの1つです。そして、それを最大限に活かしたかったら、いまのCGではどんなことは比較的簡単に出来て、泥臭くて力づくでやらなければいけないところはどこで、Mayaでは難しいけれどもZbrushと併用すれば実現出来るかもしれないとか、V-rayだとこの処理は速いけれどもこっちは3Delightのほうが得意かな、とか、まずそっちを徹底的に学ぶべきだと思うのです。そして、「表現手法として、この場合は3DCGは適切ではない。」と判断出来ることもとても大切だと思うのです。

ちょっと前にも書きましたが、CG技術を学んでいないのにストーリー重視でまずストーリーを考えると言うのは、いまの建築技術で何が出来るのかもわかっていないのに設計図を書こうとしているようなものです。

…って、超偉そうに書いていますが、僕自身のCGレベルは全く高くないです。美術センスもないし、色のセンスもありません。一応、昔々自分が学生だった頃は、「人間・動物・植物が一体も出てこなくても画面を見入ってくれるような映像を作る!」「ディスプレイスメント頑張る!」と言うことで作りました。3DCGソフトウェアに触れて半年で卒業制作だったのですが、これです↓

アートディレクションも何も出来ていない、と言うか才能無いのわかっていたので、綺麗な海中写真とかひたすら見てました。Mental Rayも授業で1, 2時間しか教わっていなくて全然わからなかったので、Maya Software Renderですw パス出力も知りませんでしたw

当時はまだスカルプトのソフトウェアとか全然なくて、授業で30分くらい?で何となく紹介されたディスプレイスメントの機能を知って、「これ凄い!使える!」と思ったのですが、TAの方に「ディスプレイスメントは制御が難しいから使わない方が良いよ~」と言われたのをはっきりと覚えています。
この卒業制作の半分以上はディスプレイスメントアニメーションの制御に費やしていました。
でもこんなのでも、当時全く知らないプロの方から「この質感どうやって作ったのですか?」と言う質問メールを頂いたりもしていたのです。

ちなみに、何年か前に、フルHD、立体視用に出力し直して、コンポジットは多少改善出来ました…と思っています↓

コンポジットに手を加えただけで、ディスプレイスメントの動きも、Maya Software Renderで出力するのも当時のままであります。

…逆に言うとこれが僕個人の限界値だったりもするわけですが。


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