弊社で開発している、医用画像からのリアルタイム3DCG可視化ソフトウェアViewtifyは裸眼立体視ディスプレイとしてSONYのELF-SR1, ELF-SR2及びAcerのSpatialLabs View Proに対応しています。ELF-SR1とSpatialLabs View Proはどちらも15.6インチですが、ELF-SR2は27インチです。解像度はどちらも4Kでカメラによる視線追跡機能が付いています。ELF-SR1はELF-SR2の発売に伴い50万円から約30万円に値下げされましたが、ELF-SR2も当初のELF-SR1と同じ価格で50万円であることもあり、現在はSONY製の裸眼立体視ディスプレイと言えばほぼ27インチのELF-SR2になっています。2026年2月現在、既にELF-SR1はソニーストアでは販売されていないようです。
一方AcerのSpatialLabs View Proも2026年2月現在公式ストアでも他の家電量販店でも取り扱いが無いようです。また、2024年9月にやはりSONYと同様、実は27インチのSpatialLabs View Pro 27が発売されているのですが、これまで実機を触る機会が無く、Viewtifyは公式には非対応でした。
今回ようやく、SpatialLabs View Pro 27の実機を試せる機会を頂きましたので、同じViewtifyを動かした結果・所感を共有してみようと思います。簡単にまとめると以下の通りです。
![]() SONY ELF-SR2 | ![]() Acer SpatialLabs View Pro 27 | |
| 大きさ | 27インチ | 27インチ |
| 価格(2026年2月現在) | 公式ストアで税込55万円 (ネット最安値は約46万円) | 公式ストアで税込55万円 (公式以外では購入不可?) |
| 画面解像度 | 4K | 4K (…だがレンダリングは実はデフォルトではHD…) |
| 重さ | 6.5 kg (重い…) | スタンド無しなら4.9 kg (軽い) |
| 見た目 | 黒がやや明るい? | 黒がしっかり黒で非常に綺麗 |
| クロストーク | そこそこ気になる | 全く気にならない |
| 視線追跡範囲 | 広い | 狭い |
| 適切な設置場所 | 机に斜め45度に直置き | 垂直かつ目からだいぶ離す必要あり |
| 速度 | 高速 (Viewtify) | 残念ながら極めて遅い(Viewtify) |
というわけで、ディスプレイそのものの重さやクロストーク、見た目の綺麗さなどはAcerのほうが良いのですが、肝心な速度の面ではSONYが圧勝でした。これは15.6インチのSONY ELF-SR1 vs Acer SpatialLabs View Proのときも同じで、持ち運びやすさ、軽さなどではAcerが圧勝だったのですが、裸眼立体視ディスプレイとしての性能はSONYのほうがずっと良かったです。
と言ってもこれはあくまでViewtifyを動かしたときの差であって、Viewtify以外のソフトウェア・アプリではまた全く異なる結果になる可能性もあります。特にViewtifyでは毎フレーム500万ポリゴン程度を0.05秒以内にその場で生成且つレンダリングまで終えないと、1心拍1秒で20分割の心臓4DCT画像をリアルタイムに表示出来ないなど、相当に負荷がかかる計算を行っています。今回使用したのは同じゲーミングノートでGPUはNVIDIA GeForce RTX 3080Ti Laptop 16 GBです。
ELF-SR2ではギリギリ全フレームコマ落ち無しで心臓4DCTを実際の心拍の速度で表示出来たのですが、SpatialLabs View Pro 27では残念ながら全くダメでした。Unreal Engine 5のGlobal IlluminationであるLumenを切ればそこそこ速くはなるのですが、上記表に記載の通り、実はAcerは15.6インチの裸眼立体視ディスプレイのときからずっと、画面解像度は4Kなのに内部では左右用の画像をそれぞれHDでレンダリングしているという、驚くべき負荷軽減をしています。SONYのほうは左右用の画像をどちらも4Kでレンダリングしています。理論上は4Kでレンダリングしても右眼用、左眼用で使えるピクセル数が半分になるので2K, 2Kでレンダリングすれば良いのですが、それでも4Kでレンダリングしたものを潰すほうが見た目は綺麗です。
で、Acerが実はHDでレンダリングしていることは公式マニュアルなどにはどこにも書かれておらず、意図的にそうなっているものと思われます。私はViewtifyを開発する際にまずSONY ELF-SR1で始めたこともあり、Acer SpatialLabs View Proの画像を見たときに非常にぼやけた印象を持ち、これは本当に4Kなのだろうかと思いUnreal Engineのコード上で諸々検証したところHDでレンダリングされていることがわかりました。AcerのDeveloper Forumで問い合わせたところ、意図的にHDでレンダリングされているとの返事を頂いたことがありました。で、これもマニュアルやコードのどこを見ても書かれていないのですが、レンダリング解像度を設定しているconfigファイルがあり、テキストでその値を4Kに書き換えると4Kでレンダリングされるようになる…のですが、Viewtifyでは残念ながら4Kにしてみたところ、遅すぎて全く現実的ではありませんでした。
もちろんViewtifyの実装が原因の可能性もあるのですが、ELF-SRまたはSpatialLabs独自のAPIを呼び出しているところ以外は基本的には全て同じ実装ですので、SpatialLabsのどこかが圧倒的に遅いのだと想像しています。SpatialLabsはOpenXR準拠ですので、OpenXRのどこかがボトルネック…なのかもしれませんが、真面目に原因を探ろうとすると非常に労力がかかることが予想されるため未検証です。
また、SONYはELF-SR1からELF-SR2に進化した際に、ELF-SR1では左右用それぞれの画像を裸眼立体視ディスプレイ用に適切にブレンドする作業をソフトウェア内で行っていたのに対し、ELF-SR2では裸眼立体視ディスプレイにはside by sideの画像が入力され、ブレンド作業はディスプレイ内部でハードウェア的に行われるように改良されているためにソフトウェア負荷が少なく、それだけでELF-SR1よりも高速になっています。
一方Acer SpatialLabs View Pro 27はサイネージを意識しているらしく、見た目の発色の良さや黒の表現力はSONYのものよりも明らかに良いのですが、ソフトウェア負荷が下がるような改善はされていないようでした。また、サイネージを意識していることもあり、それなりに机の奥に設置しないと立体視が上手くいかないようになっており、場所の確保が大変そうでした。

SONY ELF-SR2は現在はAcerと同じく垂直に置くことが推奨されているようですが、発売当初はELF-SR1も含めて斜め45度に置くことが推奨されていました。2画面を用いるViewtifyでは、下図のようにELF-SR2の直上に27インチ4Kの平面モニタを置くと非常に収まりが良く、机の上に直接ELF-SR2を斜め45度に置くとちょうど良い高さにあり、画面を垂直に見るのと実質的に同じになります。また、顔からの距離を話す必要もないため、省スペースでの設置が可能です。

…というわけで、両者の良いとこどりが出来たら最高なのですが、GPUをフル活用してPCに高負荷がかかるViewtifyにおいては実用性の観点からSONY ELF-SR2に軍配が上がる、というのが正直なところです。Acer SpatialLabsが15.6インチのときから圧倒的に遅いのはViewtifyの実装の問題なのだろうか…未だに解明出来ていません…。

